<注意> 当院では精密超音波検査(胎児ドック)は行っていません。
妊婦健診の際には妊娠が順調に経過しているかどうかを妊婦さんと赤ちゃんについてみていきます。その方法のひとつとして赤ちゃんの発育状況の観察と異常の早期発見のために広く用いられているのが超音波検査です。
超音波検査により胎児の異常を調べる精密超音波検査、通称「胎児ドック」は当院では行っていません。大阪府や兵庫県で出生前検査、特に超音波検査に力を入れているクリニックが複数ありますので、こうした施設の受診をお勧めします。
超音波検査は妊婦さんにも赤ちゃんにも安全に実施できる検査で、主に次の点について調べます。
1)赤ちゃんの全体的な発達や健康の状態の把握
2)赤ちゃんの各臓器の形や大きさが正常に発育しているかどうか
3)赤ちゃんの各臓器の働きが正常かどうか
こうして赤ちゃんの状態を把握することで、気になることがあれば早めに対応できるようになります。
妊娠の経過をみるうえで欠かすことのできない超音波検査ですが、いくつか検査の限界といえることがあります。
1)実際に生まれた赤ちゃんを診断するのとは異なり、子宮の中の赤ちゃんに外から超音波を
あてて、画像としてみえるようにしたり、各臓器の働きを数値化したりしています。
間接的な情報による診断ですので、超音波の診断は絶対確実とまでは言えません。
2)赤ちゃんの位置や向き、胎盤の位置などのさまざまな条件により、赤ちゃんに異常があっ
てもわからないことがあります。
3)性別の診断も同様で、見えた形から判断しますので、赤ちゃんの位置や向き、発達の違い
などによりわかりにくい場合や生まれたら異なっていたということがありえます。
超音波検査で妊娠初期の赤ちゃんを見ていますと、明らかな赤ちゃんの異常とは別に「はっきりと異常とは言えないが、赤ちゃんの状態が少し気になる」、「異常が潜んでいるかもしれない」という状態が見つかることがあります。こうした状態は、赤ちゃんに染色体異常があったり、赤ちゃんがその他の(心臓や腎臓などの)病気にかかっていたりする”可能性が普通よりは高くなる”ということを意味します。しかし、はっきりした異常ではないので、ほとんどは健常な赤ちゃんとして出生します。
こうした状態を示す超音波所見をソフトマーカーと言います。こうしたソフトマーカーが見つかった場合に、妊婦さんはそれを知ることで正確な診断のために詳しい検査を受けることができる一方で、はっきりした異常ではないのにそれを知ったために詳しい検査を受ける負担が増えたり、赤ちゃんの状態への不安が大きくなったりする事もあります。
そのひとつの所見がNT(nuchal translucency)という妊娠初期に見られる胎児の首の後ろに認められるむくみです。またこのNTなどのソフトマーカーを積極的に調べて胎児が染色体異常などである確率を予測する出生前診断の方法も実施されています。
胎児の超音波検査で以下のような所見がソフトマー
カーとして知られています。1)のNT以外は積極的に出生前診断を行う場合に調べる遺伝学的超音波検査であり、通常の妊婦健診で偶然に見つかると言うことは通常ありません。
1)NT(nuchal translucency)後頸部浮腫
(右写真)
2)静脈管血流量
3)心臓の三尖弁逆流
4)鼻骨低形成・無形成
妊婦健診の初期の超音波検査で偶然に、NTがみつかることがあります。「NTが3.5 ㎜です」とか「胎児の首のむくみが4.0 ㎜」ですとか急に言われてとまどう方が多くおられます。
ただ通常の妊婦健診でNTの厳密な測定は困難で、こういう指摘がされた場合も、多くの場合は過剰な心配で、健常な児が出生します。しかし、NT自体は胎児の染色体異常の確率が上昇する所見として証明されていますから、不安のある場合は、羊水検査などを受けられるのはひとつの解決方法です。またNTに間違えられやすいが、非常に染色体異常の可能性が高くなる、嚢胞性ヒグローマ(cystic hygroma)と言う所見も知られていますので、専門の施設での相談が
望まれます。
海外では第1三半期スクリーニングといって、妊娠10週ごろから15週頃にかけて、1回または複数回の母体からの採血と胎児の超音波検査を組み合わせて、胎児が染色体異常等に罹患している確率を算出し、可能性が高い場合に、羊水検査や絨毛検査を行うというスクリーニング
検査が提供されています。日本では広くは実施されていませんが、一部の専門的な施設で実施されています。